日中戦争は1937年から1945年まで、大日本帝国と中華民国の間で繰り広げられた戦争です。諸説がありますが、投入された日本軍兵士たちの総数は50~100万人、被害者は双方あわせて最大で3500万人以上とも言われています。たとえば歴史の教科書にも典型的に現れているように、日中戦争に限らず、戦争についての語りは往々にして国家対国家というかたちで形成されますが、実際にはそこにそれぞれの個性をかかえたさまざまな立場の人間がいたことは間違いありません。
この展覧会では、京都から揚子江沿岸地域へと派遣された一人の人物が、滞在先の風景や軍隊生活の日常を描いたスケッチを添えて故郷の家族に送った絵はがきをとりあげます。そこからは、国家間の利害に強制的に巻き込まれた兵士の、人間としての素直な視線や故郷の家族を思いやる複雑な心情を読み取ることができます。
第二次世界大戦が終わって70年以上を経たいま、大国の影が見え隠れする内戦、テロリズムはもちろん、サイバー攻撃、経済的な攻撃など、あらたなスタイルの争いも活発化しています。ただ、争いの形がどのようなものであれ、それを起こすのも起こさないのも、醜く笑うのも悲嘆にくれるのも、それぞれにそれぞれの問題を抱えながら生きているひとりひとりの人間であることを忘れてはならないでしょう。
また本展では、この外山氏の絵ハガキ、絵手紙のような個々の人間と戦争にかかわる資料をお持ちの方からの情報を収集いたします。人々の記憶を長く後世に伝えることは博物館の重要な使命のひとつです。みなさまのご協力をお待ちしております。
出品点数:外山作品(絵はがき、シート)約100点、関連資料数点
関連企画:講演会「戦争と人間」
講師 鈴木創士(フランス文学者、作家)
日時 2017年10月14日(土) 午後1時~
場所 嵯峨美術大学・嵯峨美術短期大学AVホール(管理棟3F)
聴講無料
作者:外山重男 明治 43 年 2 月 23 日生(三重県伊勢市その後京都移住) 昭和 47 年 11 月 13 日没(享年 63 歳)出征時期:昭和 13 年~ 14 年出征先:中国南部(上海から南京・武漢にかけての地域)